古代ローマからルネサンスまで、人類の壮大な歴史を感じる世界遺産が数多く存在するヨーロッパ。イタリアやフランス、ドイツやスペインを旅すると、石畳の道、荘厳な大聖堂や堂々たる古城、歴史を刻んだ建造物群などに魅了されます。この記事では、ヨーロッパで有名な世界遺産の中から、一度は訪れたい12カ所を厳選して紹介します。
古代文明の壮大な世界遺産
イタリア?ローマ歴史地区 有名な古代遺跡とバチカンの聖地を体感
ローマは、さまざまな時代を代表する世界遺産が集まる貴重な都市です。
約2千年前に5万人もの観客を収容したコロッセオ、古代ローマ帝国の政治の中心地であったフォロ?ロマーノのほか、ローマ市内にある世界最小の独立国?バチカン市国も、世界遺産として登録されています。次代ローマ教皇選挙会「コンクラーベ(Conclave)」の舞台として知られ、ミケランジェロの傑作『最後の審判』が祭壇の壁一面に描かれたシスティーナ礼拝堂、サン?ピエトロ大聖堂など、見どころが尽きません。

ギリシャ?アテネのアクロポリス 古代ギリシャの文化に触れる
アテネの街を見下ろす丘の上に立つアクロポリスは、西洋文明の原点とも呼べる場所です。
パルテノン神殿をはじめとする壮麗な建造物は、2500年以上もの時を超え、今もなお圧倒的な存在感を放っています。神殿に刻まれた繊細な彫刻や、アテネの街を一望できる眺望は、訪れる人々を古代ギリシャの世界へ誘います。また、近隣の新アクロポリス博物館では、発掘された彫刻や装飾品を間近で見ることができます。

トルコ?イスタンブール歴史地域 東西文明が交差する魅惑の都市
ヨーロッパとアジアにまたがるイスタンブールは、まさに文明の十字路。アヤ?ソフィア(ハギア?ソフィア)は、東ローマ帝国時代にはキリスト教の大聖堂、オスマン帝国時代にはイスラム教のモスクとして使われました。
スルタン?アフメット?ジャーミー(ブルーモスク)はミナレットと呼ばれる尖塔(せんとう)と青いタイルが美しく、礼拝の時間にはアザーン(礼拝を呼びかける合図)が街中に響き渡ります。

中世ヨーロッパの城塞(じょうさい)都市と大聖堂
ドイツ?ケルン大聖堂 天に向かう双塔の荘厳美とステンドグラス
ケルン中央駅を出ると、目の前に現れる巨大なゴシック建築がケルン大聖堂。
高さおよそ157メートルの双塔は、今でもケルンのランドマークとして親しまれています。見どころは大聖堂の内部を彩るステンドグラスのほか、東方三博士の聖遺物を納めたとされる黄金の聖櫃(せいひつ)。また大聖堂の地下にある展示施設「宝物館」では、歴代大司教の遺産や形見、儀式に使用された衣装や宝物など、貴重な資料を見ることができます。

フランス「モン?サン?ミッシェル」 潮の満ち引きで情景が変わる幻想的な城塞
ノルマンディー地方の海の小島に建つモン?サン?ミッシェルは、中世から多くの巡礼者が訪れた修道院です。
潮の満ち引きによって変化する幻想的な光景のほか、ゴシック様式のホール「ラ?メルヴェイユ(驚異?驚嘆、の意味)」は、13世紀の建築技術の粋を集めた傑作とされています。パリから日帰りで訪れることもできますが、島内や対岸のホテルに泊まり、ライトアップされた夜の修道院を楽しむのもおすすめです。

チェコ?プラハ歴史地区 プラハ城に臨む街で中世にタイムスリップ
ヴルタヴァ川沿いに広がるプラハ歴史地区は、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロック、アール?ヌーボーと、さまざまな時代の建築様式が見られる美しい街です。
プラハ城の中心である聖ヴィート大聖堂はゴシック建築の傑作とされ、カレル橋から見上げる姿は荘厳そのもの。内部のステンドグラスも必見です。また1490年ごろのものとされる旧市街広場の天文時計は、当時の天動説を反映しており、中世の雰囲気を感じられます。

芸術と文化が息づくルネサンスの遺産
イタリア?フィレンツェ歴史地区 ルネサンス芸術の宝庫
ルネサンス文化が花開いた地であるフィレンツェ。大富豪のメディチ家を後ろ盾にした文化遺産が街中に息づき、歴史と芸術を肌で感じられる街です。
サンタ?マリア?デル?フィオーレ大聖堂(ドゥオーモ)は、その壮大なクーポラ(ドーム型の丸屋根)が街のシンボル。ウフィツィ美術館では、ボッティチェリ作『ヴィーナス誕生』やレオナルド?ダ?ヴィンチ作『受胎告知』などの傑作を見ることができ、アカデミア美術館ではミケランジェロのダビデ像に圧倒されます。

マルタ共和国?バレッタ市街 地中海に浮かぶ騎士団の都
マルタ共和国の首都バレッタは、聖ヨハネ騎士団によって築かれた要塞(ようさい)都市。
街自体が世界遺産に登録されており、整然と区画された街並みは「ルネサンスの理想都市」とたたえられています。聖エルモ砦(とりで)の周辺に広がるコバルトブルーの海や、高台にある公園アッパー?バラッカ?ガーデンズからの眺めは素晴らしく、地中海地方の美しさを存分に満喫できます。また、聖ヨハネ大聖堂にあるカラヴァッジョの傑作『洗礼者ヨハネの斬首』も必見です。

スペイン?グラナダのアルハンブラ宮殿 歴史を刻むイスラムの華麗なる城
スペイン南部のグラナダにあるアルハンブラ宮殿は、13?14世紀にナスル朝によって建設されたイスラム建築の傑作です。
ナスル朝宮殿の中心である「コマレス宮」、池の水面に映し出される建造物が美しい「アラヤネスの中庭」、12頭のライオン像のある「ライオンの中庭」、緑豊かな「ヘネラリフェ庭園」など、見どころはたくさん。また、「カルロス5世宮殿」はナスル朝没落後、キリスト教徒によって建造されたルネサンス様式の建物で、合わせて鑑賞するとグラナダが歩んだ歴史に思いをはせることができます。

圧倒的な自然が作る景観遺産
ノルウェー?ガイランゲルフィヨルド 北欧の自然が織りなす絶景
ノルウェー西部のガイランゲルフィヨルドは、氷河によって削られた深い谷に海水が流れ込んでできたフィヨルドです。
首都オスロからは鉄道で、ドンボスやオンダルスネスを経由して向かいます。「七人姉妹の滝」や「求婚者の滝」など、断崖絶壁にできた滝は圧巻。クルーズ船に乗ると、その巨大さと美しさを体感できます。ダルスニッバ展望台からはフィヨルド全体を見渡すことができ、自然の造形美の壮大さを実感できます。

クロアチア?プリトヴィツェ湖群国立公園 有名なエメラルドグリーンの湖を堪能
クロアチア中部にあるプリトヴィツェ湖群国立公園は、16の湖と92の滝が織りなす美しい景観が魅力の世界遺産。
首都ザグレブからは、バスなどを利用して約2時間半でアクセスできます。透明度の高いエメラルドグリーンの湖が美しく、湖畔の遊歩道を歩くと、豊かな自然を心ゆくまで堪能できます。クロアチアで人気の観光地ドブロブニクからは少し距離があるため、移動時間を考えた計画が必要です。

アイスランド?シンクヴェトリル国立公園 地球の裂け目で感じる壮大な自然
アイスランドのシンクヴェトリル国立公園は、930年に世界初の民主的な議会とされる全島集会「アルシング」が開催されたことで有名です。首都レイキャビクから日帰りで行くことができ、大地が裂けてできたギャウ(断層)を歩きながら、地球のエネルギーを体感できます。9~3月の冬季はオーロラの観測スポットとしても知られ、運がよければ、夜空に踊る緑や紫の幻想的なカーテンを鑑賞できます。

世界遺産をより深く理解するためのグルメ?文化体験
世界遺産を訪れる際は、その土地の食事や文化に触れることで、より深い理解を得ることができます。
古都プラハでの伝統的なチェコ料理とビール醸造所見学
チェコのプラハ歴史地区を散策した後は、伝統的なチェコ料理もぜひ味わってみたいところ。じゃがいものパンケーキであるブランボラークや、ビーフシチューのようなグラーシュなど、古くから愛される料理は旅の思い出をより豊かなものにしてくれます。また、チェコはビール大国。老舗のビール醸造所を見学し、本場のビールを味わう体験も格別です。
トスカーナ地方でのアグリツーリズモ体験とワイナリー訪問
イタリア?フィレンツェから足を延ばしたトスカーナ地方で、アグリツーリズモ(農家が提供している民宿)に滞在してみるのもおすすめ。地元の食材を使った料理を味わったり、オリーブオイルのテイスティングを楽しんだりと、トスカーナの豊かな自然と食文化を満喫できます。ワイナリーを訪ねれば、ワインのテイスティングはもちろん、ブドウの収穫やワイン造りの過程も見学できます。
フィレンツェの革製品工房で伝統技術を見学
ルネサンスの都フィレンツェは、革製品の産地としても有名です。街には数多くの革製品店があり、ツアーなどに参加して工房を見学すれば、職人たちの熟練の技を見ることができます。自分だけのオリジナル革製品を作ったり、革製品の歴史や文化を学んだりすることで、フィレンツェならではの体験ができます。
世界遺産を巡る旅は、その土地の歴史や文化への理解を深めてくれます。ヨーロッパの多様な美しさに触れられる、特別な旅の計画を立ててみてください。?